#4 特別編① 岡 浩平(おか・こうへい)さん
大学院医学研究科 博士課程2年生 / 消化器内科
“リサーチマインドを忘れず、 後進医師たちの教育にも尽力したい”
京都府立医科大学では、未来の医学・医療、社会に貢献したいという高い志をもった学生たちが日々勉学や研究に励み、附属病院での実習を積み重ねています。今回は特別編として、医師としてのキャリアを重ねながら、より幅広い研究能力や学識を深め、地域医療に還元したいと大学院医学研究科で学ぶ博士課程2年生の岡浩平さんにお話を聞きました。
―これまでのキャリアについてお聞かせください。
平成26年(2014年)本学医学部を卒業、福知山市民病院で2年間の初期研修後、消化器内科の専攻医として1年間勤務、与謝野町の北部医療センターで2年間勤務。その後、福知山市民病院に戻り、消化器内科医として一般診療に携わりました。内視鏡検査などの処置をする中でたくさんのがん患者さんに出会い、がん治療への関心が高まり、消化器以外も含めて抗がん剤などのがん薬物療法も担当しました。また、卒後3年目に担当した症例を学会の支部例会で発表した際、指導医の先生から「発表するだけでは後に残らないし、評価もされない。論文にしよう」という提案をいただきました。論文を書くこと、しかも英語で書くのは初めてのことでしたが、その先生にご指導いただき2本の症例報告の論文を書くことができました。その後も、統計解析からのがん予後研究の手法を教わり、別の先生からも臨床研究の手ほどきをしていただき、7年間で6本の論文を書きました。論文のサイトで引用されている記録を見ると、自分の研究や経験が役になっているのだと嬉しくなり、励みにもなります。地方の一般病院でも新しい知見を発信できる可能性を実感しました。
―大学院への入学の動機は?
9年間の臨床経験で消化器内科の一般的なことは身につき、次はそこから専門性を深めていくというステップになると思います。私は次のステップとしてこれまでとは違う方向性のことをしてみたいという思いがありました。私が医療の道を志したのは、中高生の頃に夢中になったロシアの音楽や文化がきっかけ。文化的な背景から「生と死」をテーマにした作品や死への恐怖に関する描写が多く、生命に対する探究心が高まり医学部に進みました。消化器内科医となり多くのがん患者さんと関わる中で、生と死をより強く意識するがん治療の学びをさらに深めたいと思うようになりました。がんに関するゲノム医療などは市中病院では経験できないこと、これまで指導いただいていた先生が大学スタッフとして戻られたということもあり、大学院進学を決めました。
―大学院ではどんな学びを?
福知山市民病院勤務の頃からの臨床研究のテーマを継続しているのと、胃がんの基礎研究を始めています。これまでの臨床研究の延長線上のテーマですし、また違う視点から物事を見ることができればという思いで取り組んでいます。がんゲノム医療の「エキスパートパネル」に向けた検討会への参加のほか、週1回胆膵内視鏡検査を担当し、一般病院では経験することの少ない処置も担当させていただいています。今は大学病院での臨床業務、他病院への外勤で内視鏡検査や外来診療をしながら、大学院に通っています。忙しい日々ですが、時間もフレキシブルに作れるため自分のペースで研究できますし、まとまった時間が取れるのは今しかないと、意欲的に学んでいます。
―これからの目標は?
まずは今進めている研究をやり遂げること。将来的には、消化器内科での経験を生かして、腫瘍内科としてがん薬物治療に取り組みたいと思っています。病院では臓器別の科目で縦割りになりがちですが、近年はオプジーボに代表されるような免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬が様々ながん種で使われるようになり、抗がん剤以外の治療の選択、症状の緩和、副作用の管理なども含めて臓器横断的に診療できることが、これまで以上に求められていると感じます。それが実現できるようにするのが目標です。あとは、これまで積み重ねてきたこと、今取り組んでいることの延長線上として、リサーチマインドを忘れないように継続的に研究しながら、私自身が多くの先生方にお世話になってきたように後進の医師たちの教育にも積極的に力を尽くしていきたいです。
―府立医科大学時代の図書館での思い出は?
地下の書架に自習スペースがあり、大学の試験前や国家試験に向けてよく勉強していました。5回生、6回生で臨床実習が始まると、グループワークで課題の調べ物やミーティングなどに図書館を利用していました。図書館や基礎校舎の実習室で勉強した後、同級生と家の近くのスーパー銭湯に行って、青臭く将来への思いを語り合ったことも懐かしい思い出です。京都府立医科大学は、比較的小規模な大学ですし、同級生との付き合いも密で、いっしょに図書館に行って勉強しようという感じにもなりやすいのではないでしょうか。今回の広小路キャンパス活性化プロジェクトでは、図書館にラーニングコモンズも新設されるということで、ますます学びの環境が整備されると思います。正直、今の学生さんたちが羨ましいですね。他にも新しい企画が用意されているようですし、卒業後もまた大学に戻ってきたいなと思えるような魅力的な環境づくりを期待しています。