#12 建築家 安藤忠雄さん〈後編〉
“本のイマジネーションの世界を体現する、 小宇宙のような図書館をつくりたい”
世界的な建築家としてご活躍の安藤忠雄さん。打放しコンクリート、光と影の調和、自然との共生など唯一無二の感性で、住宅から、教会、ホテル、美術館など、国内外の数々の作品を手がけておられます。また、完成後の建物の周辺環境整備、地元大阪でのまちづくりへの取り組みなど社会貢献活動にも精力的に取り組んでおられます。独学での学びの中での本の存在、人生に影響を与えた一冊<前編>、図書館の思い出、若い世代へのメッセージ<後編>などをお話しいただきました。
建築家 安藤忠雄(あんどう・ただお)
1941年大阪生まれ。独学で建築を学び、1969年安藤忠雄建築研究所設立。代表作に「光の教会」、「ピューリッツァー美術館」、「地中美術館」、「上海保利大劇院」、「こども本の森 中之島」、「ブルス・ドゥ・コメルス/ピノー・コレクション」など。1979年「住吉の長屋」で日本建築学会賞、1993年日本芸術院賞、1995年プリツカー賞、2005年国際建築家連合(UIA) ゴールドメダル、2010年文化勲章、2013年フランス芸術文化勲章コマンドゥール、2015年イタリアの星勲章グランデ・ウフィチャ―レ章、2021年フランスレジオン・ドヌール勲章コマンドゥールなど。イェール、コロンビア、ハーバード大学の客員教授歴任。1997年から東京大学教授、現在、名誉教授。
ー図書館にまつわる思い出は?
パッと思い浮かぶのは地元大阪、中之島の図書館(大阪府立中之島図書館)です。子どもの頃よく通いました。といっても、本を読むためではなく、学校の写生の授業でしたが(笑)。
「知の殿堂」と呼ぶに相応しい重厚な建物で、日常にはない特別な空気が感じられて好きでしたね。
中之島の図書館は、住友家の15代当主が建設費と図書購入費を寄付して建設されたものです。中之島公会堂も岩本栄之助が私財を投じてつくったものでした。中之島の風景というのは、そういった民の街・大阪の歴史の美しい象徴なんですよね。その中之島に、令和の現代に至り、市民の方々と一緒に子どものための図書館をつくるプロジェクト(「こども本の森・中之島」)に参加することが出来た。建築家として、大阪人として、とても誇らしく思っています。
ー国内外で印象に残っている図書館は?
パリの国立国会図書館にある、建築家アンリ・ラブルーストが設計した閲覧室(リシュリュー館)ですね。既存の組積造建築の中庭に、増築の形でつくられた空間なんですが、世界で一番美しい本の空間だと思います。
ー安藤さんが設計されている図書館のコンセプトは?また、「理想の図書館」を設計するならどんな図書館を作りますか?
本のイマジネーションの世界を体現する、小宇宙のような図書館をつくりたいと思って、毎回全力で取り組んでいるのですが、設計条件はプロジェクト毎に違いますからね。図書館にしても、こうしたらいい、これがベスト、という絶対の模範解答はない。設計するチャンスが得られた全ての図書館で、それぞれの理想を追求しています。
ーイェール大学、コロンビア大学、ハーバード大学、東京大学などで後進育成に尽力してこられました。未来を担う若い世代に指導する際に大切にしておられることは?
「失敗を恐れずチャレンジしろ」というメッセージを伝えることです。
ー京都府立医科大学で医療人をめざして学ぶ学生たちにメッセージをお願いします。
先日「プロフェッショナル 仕事の流儀」の番組で、呼吸器外科医・安福和弘さんの回を見たのですが感動しましたね。
私達も建築のプロフェッショナルであろうと日々努めているわけですが、人の命を預かっている医療人の方々の覚悟はやはり凄いなと。
職業に貴賤はないと言いますが、人の命をすくい、その人の人生を守る、医療はやはり特別な仕事だと思います。
頑張ってください。応援しています。