#15 学びの未来を形にする夢の空間 「ラーニングコモンズ」の整備が始まっています
医科大学にこそ、ラーニングコモンズが必要な理由
「ラーニングコモンズ」とは、学生や研究者等学習者が自由に学び、協働できる環境を提供するスペースです。個別学習用のブースやグループディスカッション用のオープンスペース、デジタルツールを備え、学習支援が行われます。学問の習得だけでなく、協働やコミュニケーション能力を高める場として、大学や学校、企業、地域社会にも広がりを見せています。少子化が進む中、ラーニングコモンズを志願者獲得対策の柱とする大学もあります。しかしながら、ラーニングコモンズは主に文系の思想で、医科大学や理系の単科大学ではあまり整備が進んでいないようです。医療の現場では、患者さんとの意思疎通、医療チームとしての協働性など、コミュニケーション能力を養うことが不可欠。また医学部では、先輩から後輩へと「教え、教えられる」ことでお互いの学習効果を高める屋根瓦方式の教育体制が継承されており、このような学びを実践する場所が常に求められています。現状、京都府立医科大学には、学生の集まれる施設がありません。学生たちが、集い、語らい、ともに学べる空間として、ラーニングコモンズは大きな役割を果たすことが期待されています。
「図書館の存在価値を高めよう」という情熱が集結
京都府立医科大学では、こうした学びと交流の場の整備が数十年間の課題でした。世界中がコロナ禍で苦しんでいた時、医療崩壊といわれる中で、使命感に燃えて頑張っていた多くの医師、看護師たち。そのような使命感をもち、たくさんの命を救う優秀な医療人材を育成し、地域医療に貢献するためにも、今こそ教育環境づくりが急務だと考えます。1890年の開設以来「知の蔵」として、学びや研究を支えてきた附属図書館の重要な位置づけを改めて認識し、その存在価値を高めようと力を尽くす学長、附属図書館長、経理課、施設課をはじめとする学内関係者の情熱が集結し、2023年7月、附属図書館を中心とする「広小路キャンパス活性化プロジェクト」が始動しました。プロジェクトの核ともいえる取り組みのひとつがラーニングコモンズの整備です。外部機関や一般への営業的なラーニングコモンズ活用などにより収益を上げ、図書館機能をさらに拡充させることも目指しています。
「ざわざわした図書館」を創造する
学生たちが勉強する、ミーティングする、食事をする、友だちと語らう、多目的ホール的に活用する、また学生、教職員のみが使うものではなく、学会、研究会等と連携するとともに、地域との交流の場にもなる「汎用性のあるラーニングコモンズ」がコンセプト。それを実現するためにさまざまな議論を重ねました。しかし我々は、学生時代などで実際にラーニングコモンズを使った経験がありません。「実体験や経験者の声が欲しい」ということで、色んな大学を視察し、ラーニングコモンズに求められているもの、運用の課題、どのような特色で空間を組み立てたのかなど、担当者から直接お話を伺いました。良いことも、悪いことも聞いた上で、他大学においては悪いことでも、京都府立医科大学では、リスクを恐れずにチャレンジしてみようということになりました。現在進行中の広小路活性化プロジェクトでも、積極的にトライして、問題があれば見直しながらのチャレンジを続けています。多くの図書館内は飲食不可ですが、当学のラーニングコモンズは、食事やお茶を飲みながら話をしたり、リラックスしたりできる空間とします。図書館は静かに本を読んだり、勉強したりする場所という固定概念を捨てて、たくさんの人が訪れる活気ある場所「ざわざわした図書館」を創造していきます。
2025年4月完成に向けて、環境整備を開始
150年の歴史を継承しつつ、さらなる進化を目指す京都府立医科大学附属図書館のラーニングコモンズのコンセプトやスタイルが決まり、2025年4月の完成に向けて環境整備を開始しています。まずは、2024年8月~10月、1階閲覧室と地下固定書架に収蔵されていた10数万冊の書籍を整理し、地下に新設された電動書架に移動しました。医科大学には欠かせない学術誌や専門誌などのジャーナルは、年々増加していくのですが、従来の倍の収納力がある本棚移動式の電動書架に収めることができました。2025年1月からは1階スペースのカーペットの張替え、壁の塗装など内装工事がスタートしています。コンセプトを表現するため、多様なアイデアを検討して、悩みに悩んで出来上がった空間デザイン。固定概念を捨てて創造する新しい空間のイメージを施工業者と共有するのは難しく、何度も修正を依頼しました。鴨川や御所をイメージした爽やかな色合いの案もありましたが、元気な若者の学生のイメージ、活気ある雰囲気となる明るい暖色系のカラフルな配色で決まりました。そして1月20日からは、ラーニングコモンズの整備等を目的とするクラウドファンディングも始まります。附属図書館がこれからも重要な役割を果たし続けるために、皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
クラウドファンディングはこちらまでお願いいたします。
京都府立医科大学広小路キャンパス活性化プロジェクト
「命を紡ぐ架け橋に!未来の医療人材を育む、学びと地域交流の場」