#8 看護学科 / 吉岡さおり先生のエッセイ
図書館の思い出
私と図書館との思い出をふり返ると、九州大学の医学図書館、大阪大学の生命科学図書館が思い浮かぶ。九州大学は私の母校であり、看護学生時代を、大学病院と同じ馬出キャンパスで過ごした。当時は比較的新しい図書館であったが、30年の時を経て老朽化が進み、2022年に大幅改築の上リニューアルオープンした様である。図書館を利用した記憶として一番に思い出すのは、国家試験勉強のための自習に活用したことである。当時の私はあまり勤勉な学生ではなかったが、この時期は毎日図書館に通い、朝から夜まで勉強した記憶がある。看護学科の同級生や医学部の学生も多く通ってきており、ピンと張りつめた空気の中、必死に勉強した。集中力が薄れてきたころ、誰が呼びかけるともなく狭いラウンジに同級生が集まり、自販機のコーヒー牛乳を飲みながら、つかの間の休憩を楽しんだのがよい思い出である。勉強の甲斐あって、無事に国家試験に合格することができた。
看護師として福岡、大阪で勤務した後、思い立って大阪大学に進学した。大阪大学では、学部編入学~博士前期課程の4年間を吹田キャンパスで過ごした。吹田キャンパスには、以前のコラムでも話題に出ていた神殿のような生命科学図書館がある。当時の生命科学図書館には「伝説の」といっても過言ではないような敏腕司書さんがおり、本当にお世話になった。当時はジャーナルの電子化がそこまで進んでおらず、蔵書にない文献を取り寄せてもらうことも多々あったが、どんなにマニアックな文献でも、論文ではないコラムのような記事であっても、確実に入手してくださった。吹田キャンパスには医学部のほか、歯学部、薬学部、工学部、人間科学部などがあるが、様々な学問領域に精通しておられ、関連ジャーナルの紹介、検索の際の適切なキーワード等の助言など研究そのものの支援を頂いた。さらに敏腕な側面としては、図書館中央の自動ドアがから入館し、司書さんがいるカウンター前の席に座った時には、依頼してあった文献が既に目の前に置いてあるのである。まさにプロの仕事だといつも驚かされていたし、本当に感謝している。
仕事を辞め、学業に専念した4年間、何度この図書館に足を運んだかわからない。これまでの人生において、一番勉強し、最も多くの書籍や文献を読んだと思う。当時同じ研究室にいた先輩から、「文献の海に飛び込めるのは今しかできないよ」と助言を頂いた。その先輩はまさに文献にまみれて必死に博士論文を書いておられた。私も及ばずながら、無事に修士論文を書き上げることができた。当時集めた文献を読み返すことはもう無いが、十数冊に及ぶファイルは現在も書棚に保管してある。それらを見ると、自己満足ではあるが「よく頑張ったな」と少しだけ浸ることができるのである。