
#10 地域看護学 / 志澤美保先生の教員エッセイ
図書館の思い出と私にとっての本
私の図書館の思い出は、富山や大阪での大学時代のことが強く鮮明に残っている。私は、学部は富山で過ごした。富山医科薬科大学(現富山大学)の図書館は大きいわけではなかったが、特徴として、各学科の最高学年のみ24時間の図書館利用が許されていたことだと思う(現在は不明)。実習や国試の勉強などでどうしても夜間、調べものがしたい時にセキュリティキーを用いて入れるようになっていた。私の学生の頃は、今のようにどこからでも図書館にネットからアクセスし、データベースが見れる時代ではなかったため、実習準備中の自己学習でわからないことがあれば図書館に足を運ぶ必要があった。そんな夜間の図書館を、一度だけ利用したことがある。入り方などは全く覚えていないのだが、ただただ真っ暗の図書館の中で恐々医中誌を探し、調べものをしながら、いつもと違う特別な空間にどきどきして高揚感を持ったことを覚えている。
大学院では、大阪大学の吹田キャンパスにある図書館を多く利用した。こちらは大きな神殿のような図書館だった。私はいつも文献検索で行き詰まると、直接、司書の方に相談し、検索を助けてもらった。その時、キーワードの使い方やデータベースの特徴などもいろいろ教わり、本当に多くの学びを得たと思う。また、図書館の独特の空気も、思考が固まった頭にはいい切り替えとなるので、図書館に行って、ソファーで論文を読んだり、レポートを作成したりなどしていた。どちらも懐かしい思い出である。
そもそも、私は本の匂いが好きだ。それは小さい頃から本の多い家で育ったからかもしれない。人が知識や好奇心を増やすのに、本というのは大切である。子どもには、文章がなくても楽しめる絵本や写真集はさまざまな刺激を得るのに便利であり、効果的である。また、子どもにとっての本は自分の好奇心を刺激するだけでなく、大人とのやりとりを促進するツールにもなり、乳幼児期の共有感覚を育み、対人関係を促進するのに最適である。近年、実際に読み聞かせの効果が研究などで実証され、本を乳幼児の家庭に配布するブックスタート事業などもあり、本の意義というものが再認識されている。一方、現在は電子書籍が普及し、本との関わり方は多様になった。電子書籍やネットから得られる情報は大変便利で、学生もまずはスマホからネット検索をする人が大半であろう。私もそうである。電子書籍との付き合い方は、賛否両論あると思うが、本などの書物で情報伝達をしていた時代から、IT利用した情報伝達する時代になり、確かに情報量は増えたのかもしれない。だからこそ、質がより重要になってきており、いい刺激、知識になる情報を掴んでいく術を持つことが求められる。私が図書館で学んだことはそういう技術と人の原点の知識欲かと思う。最近は図書館までなかなか出向けてないので、時々は訪問したいと思う。
