#1 「広小路キャンパス活性化プロジェクト」始動
“未来の医療人材を育て、大学と地域の人々をつなぐ”
河原町通広小路北西側に位置する約1万1千平方mの「広小路キャンパス」。ここには大学における高等教育と学術研究活動を支える重要な基盤である附属図書館、看護学生の学び舎である看護学学舎があります。2023年(令和5年)7月、未来を担う医療人材育成の環境を整え、キャンパスの活性化をめざす「広小路キャンパス活性化プロジェクト」が始動しました。プロジェクト責任者である京都府立医科大学の夜久均学長に、プロジェクトの目的や概要を聞きました。
京都府医科大学
学長
夜久 均(やく・ひとし)
1957年 大阪生まれ
1982年 京都府立医科大学卒業
1984年 国立循環器病センター心臓血管外科レジデント
1988年 国立循環器病センター研究所研究員
1990年 Vermont大学(Burlington, USA)研究員
1993年 St. Vincent’s Hospital (Sydney, Australia) 心臓胸部外科
1997年 京都府立医科大学帰学
2004年 京都府立医科大学心臓血管外科学教授
2019年 京都府立医科大学附属病院長
2023年 現職
―「広小路キャンパス活性化プロジェクト」の目的は?
京都府立医科大学は「世界トップレベルの医学を地域へ」を理念としています。1872年(明治5年)の創立以来、150年を超えて建学の精神は受け継がれており、府民・市民のみなさまに寄り添いながら成長してきた歴史があります。大学というと高等教育機関でもあり、堅苦しいイメージがあるかもしれません。中でも図書館は、厳かな空間であり、学生たちが自由に出入りできる学びの空間、大学の基盤ともいえる施設です。大学本部と附属病院があり、多くの人が行き交う河原町キャンパス、それに対して図書館のある広小路キャンパスは大通りから少し離れた立地特性もあり、静かな雰囲気で、一般の方々の利用も少なく、認知度も高いとはいえません。図書館を中心に活性化を図り、学生たちの学びを充実させるための環境を整える、大学と地域のみなさまの交流拠点として気軽に利用いただける環境を整えることを目的に「広小路キャンパス活性化プロジェクト」を2023年(令和5年)7月から始動しました。広小路キャンパスの活性化は、大学全体の活性化にもつながるものでもあります。
―2024年(令和6年)2月現在でのプロジェクトの取り組みは?
大学や図書館という場所にはなんとなく訪れにくいという一面もあると思います。それを払しょくするべく、府民・市民のみなさまが気軽に利用できる、身近に感じていただけるような企画を実施しています。大学の学生や教員・職員だけでなく、一般の方々にも利用いただける取り組みとして、2023年8月に電動マイクロモビリティ(電動キックボード、電動アシスト自転車)のシェアリングサービスのポートを広小路キャンパス内に設置しました。京都府立医科大学は京都府立植物園の近くに下鴨キャンパスがあり、河原町・広小路キャンパスからの移動に多くの学生や教員が活用しています。また河原町などの繁華街へ飲みに出かける時に乗って行き、街中のポートに乗り捨てという使い方をしているというのもよく聞きます。一般のみなさまにもぜひ積極的にご利用いただきたいですね。2023年12月からは、ランチタイムにキッチンカーを導入。毎週火曜と木曜は河原町キャンパス、水曜と金曜は広小路キャンパス、いずれも11時~14時、日替わりで多彩なジャンルのランチを提供しています。病院に来られた方、近隣の方、キャンパス付近を通りかかられた方、観光客の方など、大学キャンパスを訪れるきっかけになっていると思います。学内の環境整備としては、広小路キャンパスの屋外スペースにテーブルとベンチを設置しました。天気の良い日には、学生たちがランチやお茶を楽しんだり、おしゃべりしたりできる、憩いのスペースになっています。
―これから予定されているプロジェクトは?
図書館内の学生の教育環境の充実ということで、ラーニングコモンズの設置を進めています。図書館には自習室があり、静寂の中で勉強できる場所もありますが、学生たちが少人数でミーティングやディスカッションできる場が今はありません。静かに読書や勉強のできるスペースとアクティブに活用できるスペースを分離して改装します。また、府民・市民のみなさまにも気軽に入っていただけるカフェの開設も検討中です。学生たちの多様な学びに対応し、地域のみなさまにも親しんでいただける場となるような図書館をめざしています。これは「広小路キャンパス活性化プロジェクト」における最も重要なプロジェクトですが、施設の整備や改修工事には多くの費用がかかります。ご寄付やクラウドファンディングなどでご支援を賜り、必要な資金を調達したいと考えています。2025年度中の完成をめざし、2024年度前半にクラウドファンディングのスケジュールや詳細を決定して、発表する予定です。
―今、この時期にプロジェクトを推進されることの意味は?
我が国の人口、特に18歳人口が今後さらに減少します。団塊の世代が18歳の時には約250万人だったのが、今は約110万人と半減しています。定員割れをしている大学もあり、国としては基本的に二つの軸で大学の選別を進めています。一つは「国際卓越研究大学」。日本の研究力低下が懸念される中、10兆円規模のファンドの運用益により、世界トップレベルの研究力を実現するための支援を行うもので、唯一東北大学のみが指定を受けています。もう一つが「地域中核研究大学」。研究の特定分野に強みをもつ大学が、その研究成果を、産学連携で社会実装し、社会貢献に繋げていくというもの。我々は150年の歴史の中で、地域の拠点大学としての役割を果たしてきたという自負もありますし、別のプロジェクトで産学公連携のプラットフォームづくりも進めています。「広小路キャンパス活性化プロジェクト」で地域のみなさまとの交流することは、世界トップレベルの医学を地域の医療へ提供するための機会創出にもつながるはずです。医療では地域に貢献していますが、それだけではなく、健康な方、地域に暮らす方々と日頃からコミュニケーションを深められる環境を整えておくこと、それも大学の強みになると考えています。
―「広小路キャンパス活性化プロジェクト」を応援、ご支援くださる方へメッセージを。
1872年の創立から150年にわたり、地域に軸足を置き、医学・医療を中心に府民・市民の方々の身近に寄り添う大学であり続けてきました。これからも変わらぬ存在として成長し続けていきたいと思っております。「広小路キャンパス活性化プロジェクト」のほか、毎年開催しておりますオープンキャンパス、オープンホスピタル、学園祭「トリアス祭」などもあります。高等教育機関という、一般の方からはハードルの高いと思われる施設ではありますが、親しんでいただける仕掛けや企画も行っていきますので、ぜひ足をお運びください。未来の優秀な医師、看護師、研究者、医療人材を養成することも、「将来に向けて、われわれへの社会からの大きな要請」でもあります。みなさまの温かいご支援を何卒宜しくお願い申し上げます。