
#12 老年・在宅看護学 / 伊藤尚子先生の教員エッセイ
図書館の思い出
こちらの大学に赴任して、数カ月がたちました。(2022年:編集注)赴任して日が浅いため、ご依頼されたコラムの冒頭を、他大学の図書館の思い出から始めることをどうぞお許しいただければと思います。さて、私の思い出の中には、いくつかの図書館の存在があります。
思い出深い図書館といえば、語学を学んだソウル大学と、院生と大学教員を経験した名古屋大学の図書館です。この二つの大学図書館の印象が強く残っています。その理由は、初めての海外生活であったり、大学教員としてのスタートであったりした私の人生のタイミングと図書館の思い出が重なっているからだと思います。
まず、語学を学んだソウル大学の図書館の思い出からお話をしたいと思います。ソウル大学では書籍の豊富さもさることながら、思い出すのは図書館内の学習室の様子です。その当時は図書館に直接出向き、学習室の席を確保してそこで勉強をしました。とても広い学習室であったのにも関わらず、いつも学生でいっぱいで、席を確保することも一苦労だったのを覚えています。私は外国人学生として大学に所属しながら、若いソウル大の学生と語学の教えあいをして学びを深めました。そしてその場所は、決まって図書館前の小さなスペースで、そこで温かく甘い韓国のコーヒーを飲みながらすごしたことを覚えています。
次に思い出深い図書館の記憶は、名古屋大学の図書館です。そのころ私は博士前期課程の学生でありながら、大学の助教を兼務していました。業務の後、指導教員の研究室に行き、ゼミに出て研究を進めていました。そのころの指導教員から、「この本はあなたの研究分野の必読本だから読みなさい。文献は調べておられますか」とよく指導もしていただいていました。それらの書籍も文献も、その図書館には必ずあり、私はゼミの後、図書館に寄ってから書籍や文献を大急ぎで入手して、また職場に戻る生活をしていました。大学の仕事は大変忙しかったのを覚えていますが、図書館で過ごす時間と、図書館の静かな空間にほっとした記憶が思い出深く残っています。
私と京都府立医科大学の図書館の思い出は、これから作っていくことになります。こちらの図書館も蔵書が多く、司書さんも丁寧で大変すばらしいと思います。きっとこれまでと同様に素敵な思い出の場所になるのだと思います。文献検索など、インターネットの普及ではるかに便利になりました。それでも、私はこれからも図書館という場所を利用しようと思います。そして私も経験したように、学生の皆さんにとっても、図書館がほっとできる場所であり続けてほしいと思っています。
